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「何度言っても、同じことを間違えてしまう…」 「どうして、こんな簡単なことができないんだろう?」
日々の支援の現場で、利用者さんに対してこのように感じたことはありませんか?
漫画「ケーキを切れない非行少年たち」は、非行に走る少年たちの背景には、単なる性格や家庭環境の問題だけでなく、**「認知機能の弱さ」**という見過ごされがちな困難が隠されていることを教えてくれます。これは、私たちが支援する高齢者や障がいを持つ方々を理解する上でも、非常に大切な視点を与えてくれます。この漫画のポイント:「ケーキが切れない」が意味するもの
この漫画の象徴的な場面が、タイトルの通り「丸いケーキを三等分にできない」少年たちの姿です。
これは単に「不器用」なのではなく、
物事を全体的に見て把握する力(見る力)
見えない線をイメージして分割する力(想像する力)
体を思い通りに動かす力(協調運動)
といった、認知機能に課題があることを示しています。彼らは「わざとやらない」のではなく、「やりたくてもできない」のです。
少年たちが抱える困難の具体例
漫画に登場する少年たちは、以下のような様々な困難を抱えています。
人の表情や話の意図が読み取れないため、空気が読めない行動をとってしまう。
物事の段取りを立てるのが苦手で、何から手をつけていいか分からなくなる。
感情のコントロールが苦手で、カッとなりやすい。
文字を読み書きするのが極端に苦手で、簡単な書類が書けない。
自分の行動がどんな結果につながるか想像できないため、安易に犯罪に手を染めてしまう。
これらの困難が、周囲からの誤解や叱責につながり、自己肯定感を失わせ、孤立を深めていく悪循環が描かれています。
ヘルパーさんの仕事にどう活かすか?視点の転換と支援のヒント
この漫画が教えてくれるのは、「困った人」を**「困っている人」**として捉え直す視点です。私たちが日々接する利用者さんも、認知機能の低下などにより、同じような困難を抱えているかもしれません。
支援のヒント1:見てわかるように伝える 口頭での説明が分かりにくい方には、絵や写真、実物を見せながら伝える。「あれ取って」ではなく、指をさして「あのテーブルの上の、青いコップを取ってください」と具体的に伝えます。
支援のヒント2:手順を分解し、短く伝える 一度にたくさんの指示を出すと混乱してしまいます。「着替えましょう」ではなく、「まず、上のボタンを外しましょう」「次に、右腕を抜きましょう」というように、一つの作業を細かく分解して、一つずつ伝えます。
支援のヒント3:一緒にやってみる、手本を見せる 言葉だけでは伝わらないことも、隣で一緒にやって見せることで、スムーズにできることがあります。手順を覚える手助けにもなります。
支援のヒント4:背景にある「困難」を想像する 利用者さんが不安そうな顔をしたり、急に怒り出したりした時、その背景には「言われていることが理解できなくて混乱している」「次に何をすればいいか分からず不安になっている」といった認知的な困難が隠れているかもしれません。その可能性を考えるだけで、私たちの対応も変わってきます。
まとめ
この漫画は、非行少年という切り口ですが、その根底にあるのは「目に見えない困難を抱えた人々を、いかに理解し、支えていくか」という、福祉の現場における普遍的なテーマです。
利用者さんの「できない」ことの裏にある「困っている」背景に思いを馳せ、その方に合ったコミュニケーションや支援の方法を探すきっかけとして、非常に多くの学びを与えてくれる作品です。日々の支援の引き出しを増やすためにも、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
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