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訪問先で感じる「何か」の正体は? 漫画『子供を殺してくださいという親たち』から学ぶ、支援の現場で大切なこと
皆さん、いつもお疲れ様です。 私たちは日々、利用者様のお宅に訪問し、ケアを提供しています。その中で、ご本人やご家族との会話や、お宅の様子から「何か、言葉にならないサイン」を感じ取ることがあるかもしれません。今回は、そうした「見えないSOS」について考えるきっかけとなる一冊の漫画をご紹介します。
衝撃的なタイトルの裏にある、家族の悲痛な叫び
その漫画は**『子供を殺してくださいという親たち』**(原作:押川剛、漫画:鈴木マサカズ)です。
少しショッキングなタイトルですが、これは決して過激な内容の漫画ではありません。 「子供を殺してください」とは、
長期化するひきこもり
家庭内暴力
精神的な問題
などを抱える我が子に対し、八方ふさがりとなり「もう自分たちではどうすることもできない。このままでは、親子共々ダメになってしまう」と追い詰められた親たちが発する、悲痛なSOSの言葉です。
この漫画は、そうした親からの依頼を受け、問題を抱える子供(主に成人)を自立支援施設へ移送する「説得・移送のプロ」の実話に基づいています。壮絶な現場の様子を通して、現代社会が抱える家族の孤立や、支援の必要性がリアルに描かれています。
この漫画から、私たちが学べること
この物語は、ひきこもり支援という特殊な現場の話に聞こえるかもしれません。しかし、私たちヘルパーの業務にも通じる、大切な視点が数多く含まれています。
1.「見えない問題」に気づく視点 私たちが訪問するご家庭にも、いわゆる「8050問題」(80代の親が50代のひきこもりの子供の生活を支える問題)や、ケアの対象である高齢者の裏で、そのご家族が深刻な悩みを抱えているケースが潜んでいるかもしれません。
「いつも姿を見せないご家族がいる」
「部屋から物音がするけれど、誰も出てこない」
「利用者様が、ご家族について何か言いたそうにしている」
そうした小さな違和感が、実は深刻な問題のサインである可能性を、この漫画は教えてくれます。
2.一人で抱え込まないことの重要性 漫画の主人公は、決して一人で問題を解決しようとはしません。専門知識を持つスタッフとチームを組み、警察や行政とも連携して、困難なケースに立ち向かいます。
これは、私たちの仕事にも通じることです。訪問先で何か気になることがあった時、「自分だけで何とかしよう」「これは自分の仕事の範囲外だ」と一人で抱え込むのは大変危険です。些細なことでも必ず事業所に報告し、ケアマネージャーや他の専門職と情報を共有することが、利用者様とご家族を守り、ひいてはヘルパー自身の心身を守ることにも繋がります。
3.私たちは「つなぐ」役割を担っている ヘルパーが直接、家庭問題の解決に介入することはできません。しかし、最も生活の場に近い専門職として、問題の兆候を誰よりも早く察知できる立場にいます。
その「気づき」を適切な場所(事業所の責任者やケアマネージャー)に報告し、「つなぐ」こと。それが、孤立している家族を社会的な支援につなげるための、非常に重要で価値のある第一歩となります。
まとめ
『子供を殺してくださいという親たち』は、支援の現場で働く私たちにとって、「自分の仕事の範囲」を少し広げ、より深く利用者様とその背景を理解するためのヒントを与えてくれる作品です。
日々の業務の中で感じる「何か」を見過ごさず、チームで共有し、適切な支援につなげていく。その意識を持つことが、私たちが提供するケアの質をさらに高めることに繋がるはずです。
もし訪問先で不安に感じることや、判断に迷うことがあれば、決して一人で悩まず、いつでも事業所に相談してください。
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